ひどいいびきの症状を緩和するための治療用アイテムとして「マウスガード」と「マウスピース」が用いられるようになっています。
ここでは、マウスピースやマウスガードによるいびき治療の現状について、確認してみましょう。
医療用のマウスピースは顎の位置を固定する働きを持つ
人体が覚醒状態にあると、脳は舌に信号を送って、舌が口腔内でとどまるようにコントロールしています。
睡眠中は脳がこの指令を出さなくなるため、舌は喉の奥に落ちていきやすくなるのです。
口腔内の筋肉が発達している若者の場合、筋肉が舌を支えてくれるため、睡眠中であっても気道が詰まってしまうということはほぼありません。
一方で、年齢を重ねて口の筋肉が衰えてくると、舌が気道をふさいでしまいます。
この状態を、「舌根沈下」と呼びます。
これにより、ひどいいびきが発生するのです。
「スリープスプリント」と呼ばれる医療用のマウスピースもしくはマウスガードを装着すると、顎の位置が固定されるため、舌根沈下が起こりにくくなります。
その結果、空気の通り道が確保されるので、いびきの症状が緩和されるのです。
スポーツ用のマウスピースでも、ある程度症状は改善が見込まれるものの、「しっかりと治したい」という人は、「いびき外来」や「マウスガード外来」などの専門科目で受診することをおすすめします。
マウスピースを使うことで病気の予防も可能
いびきは、加齢による筋肉の衰えに加えて、血圧の上昇や強いストレスなどに起因して、悪化することもあります。
特にストレス性の場合には、ひどいいびきに加えて、「歯ぎしり」をしているケースも多く見られます。
歯ぎしりは、歯やあごに強い負担がかかり、時には歯が割れたり折れたりしてしまうこともあります。
マウスピースやマウスガードを装着することで、こうした事態を予防することが可能です。
いびきに伴うもう1つの重篤な疾患は、「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」です。
これは、舌根沈下によって、気道が完全にふさがれてしまった状態を指します。
SASは、不眠や集中力・判断力の低下、過度のストレスやうつ症状などの原因となります。
また、この状態が長期間継続してしまうと、心筋梗塞や脳梗塞といった深刻な病気に発展する可能性が非常に高くなるのです。
マウスピースやマウスガードを着用することで、気道はほぼ確実に確保されるので、SASのリスクを大幅に下げることができます。
そのため、中高年の男性を中心として、いびき外来を受診する人が近年大幅に増加しているのです。